手紙の内容

友達が帰ってから、すぐにクラスのみんなの書いてくれた手紙を一つずつ読んだ。


どんな事が目に入ってくるのかと怖かったので、私にとって全く関係のない人の手紙から読み進めていった。


やはり私との関わりが一切なかった人たちの手紙の内容は、本当に私が休んでる理由が理解出来ていなくて、早く元気になるといいですね!等のありきたりな内容だった。


少し関わりがある女子や、男子達も、「学校、なかなか楽しいよ!早く元気になるといいね!」みたいな内容。


ついに、あの5人の男子達の手紙が残った。


読むか読まないか、すごく迷った。

悪い内容は書いていない事はわかるのに。

でも読むのに躊躇してしまう。

手紙を書いている彼らの背景を想像してしまうから。


自分がいじめていた人間に対してどんな気持ちで手紙を書いたんだろう?


手紙を書くって決まった時に、どんな気持ちだった?

嫌々?仕方なく?

何で俺が?ってイライラ?

それとも、何の感情も湧かなかった?

ただ、淡々と?


いろんな事を考えてしまった。


が!


もういいや!読まないのも気になるし!

サッと読んで早く片付けよう!

って思って勢いよく手紙を読んだ。


それでも怖かったんだろう。

5人の中でも、読む順番は、その中でも一番私をいじめていなかった人から…最後にリーダー的存在の彼。


読むまでの、嫌〜な気分は覚えてるのに、手紙の内容を覚えてない私って…(笑)


一つだけ。

「早く元気になって学校に来て下さい」

と、リーダー的存在の彼が手紙に書いていたことは覚えてる。



「嘘つき」

って思った。

本当はそんな事思ってないくせにって。

嬉しくなかった。


結局この手紙は、何の意味があったんだろう。


クラスの生徒達が言い出した事ではなくて、担任が言い出した事。

授業の一環として、だからみんなは書いてくれた。

もしこれが、書きたい人だけが書くものだったら?

何通届いたかな。


先生が、仕事の一つとして、教師としての義務と責任があるから提案したように思えてならない。


この手紙を多分、私は早い段階で捨てている。

手紙を取って置いていた記憶が全くない。

それぐらい私の中で、この手紙たちは励みにはならなかったのだろう。


いじめで悩んでいたのは私だ。

不登校。学校に行けなくて苦しんでいたのは私だ。


当事者の気持ちになって考えるって事は、その経験がない人にとっては、なかなか解らないもの。


それはわかる。

でも、当事者の気持ちを考えて、と言うよりも、担任の先生は、「私は先生」って立場なんだからこんな時に何をしたらクラスから不登校児を無くせるだろう? 登校拒否をしなくなるだろう?って。


私が学校に来れれば何でも良いみたいな。

極端な話し、その背景なんてどうでもいい。

とにかく不登校児がクラスにいるのが先生としての問題だ。ぐらいな、「義務感」しかないように感じた。


ただ、先生の「やるべき事はやった!」って言う満足感、達成感の為に手紙があったようなものだったように感じる。

手紙が届いた日

雪が降る頃、クラスの女子が3人家に遊びに来た事がある。


まだ私が学校に行ってた頃に仲良くしていた友達。


その子達は、担任から手紙を持たされていた。


手紙っていうのは、クラス全員からの手紙。

しかも、一人一人が書いてくれていて、一人一人、封筒に入っているもの。


私が早く学校に復帰出来るように、みんなで授業中に書いたらしい。



先生本当に辞めて。と思った。


今度は何?

これ以上、余計な事しないで。

そっとしといてよ!

クラスメイトを巻き込まないでほしいと思った。

便箋と封筒をそれぞれが用意して、女子だけならまだしも、男子が便箋と封筒…?


男子が便箋と封筒を用意する事が一大事に思えてならなかった。

関係ない人にまで迷惑をかけたくない。


これ以上、変にスポットライトを当ててほしくない。

申し訳なさまで感じた。


私が一番気になったのは、やはり私をいじめていた男子達からの手紙だった。


彼らが私にどんな内容を書いたのか、封を開けるのが怖かった。

でも、授業でわざわざ書かせられた事だ。

悪い内容が書いてある訳がないと感じてはいた。

むしろ、マニュアルがあるかの様なありきたりな内容だろう…と察した。


友達の前では、そのたくさんの手紙を読むことは出来なかった。

自分の表情が強張りそうだったから。

私がどう反応するのか、想像できなかったし、

ここでどう反応したらいいのかを考えてしまった。

また人の目を気にしてた。


友達にはとても感謝している。

その日、『何で学校来ないの?』なんて聞かれなかった気がする。

そんな話しが出なかったように思う。


私が気にしないように気を遣ってくれていたのか、それとも、何も考えてなくてあの対応だったのかは私には分からないけど、とても居心地が良かったのを覚えてる。


学校であった話しをしてくれて、私は笑えていた。

プレッシャーや、焦り、嫉妬、妬みから、聞きたくないはずの学校やクラス、担任の話しが飛び交っていたけど、それを笑いながら聞くことが出来ていた。

たくさんのプリクラももらった。


『また遊びに来るから!今度はプリクラ撮りに行こう!』なんて誘ってくれて、気持ちが少し晴れた気がした。


学校を休み過ぎて、みんなからどう思われてるんだろう?

ばかり気にしていたから。


無理に、『学校に来て』とも言われず、

外で会う楽しみも考えてくれた。

自然に、私に気を遣わせない空気感を作ってくれた友達に今更ながらとても感謝している。


その当時は、張り詰めていた気持ちを緩めてくれてありがとう。とは思ってはいたけど、今ほどの感謝は出来てなかったかもな。


振り返ってみると気付けることもあるんだね

同じクラス内でのいじめ。

なのに、一つの教室の中でも、人が違うとこうも違うものかと思った。


いじめに気付いていたのか、いなかったのかは友達には聞けてない。

それでも、友達の力は凄い。

人は人に助けられるのかもしれない。



なら少数でも仲良くしてくれる子がいるならいいじゃない!と思う人もいるかもしれない。


ただ、いじめられたくなかった。

いじめられている私を感じたくなかった。

人から汚いもの扱いされてる自分を感じたくなかった。


私は、みんなとただ仲良くしたかっただけ。

それだけ。

いじめられた事はあるのだろうか。

担任は、彼らが認めた上で、注意をしたらしい。

注意をするのは当たり前。


でもそこじゃないんだよなーと思う私がいた。


言葉で注意したと言っても、所詮、

『何でそんな事したんだ?もう辞めなさい。』程度だろう。

そんな事で『はい、もう言いません』

なんて簡単な問題なら、あんなに長い間悪口?言わないって…

その一時しのぎなやり取りなんかで根本的な解決にはならないんじゃないかと思った。


担任は、いじめられた経験はあるのだろうか?


私をいじめていた男子達は、いじめられた経験はあるのだろうか?



いじめられた経験がない人間には、いじめられてる人の気持ちなんて分からないだろう。